Seminar reportセミナーレポート
’16 4/9,10(土,日)『顎関節症ライブ実習コース』が開催されました③
『顎関節症ライブ実習コース』〜その3〜は、患者様治療後の考察です!
IPSG副会長、岩田光司先生の講義、まとめをお伝えいたします。
顎関節症の治療において、大変重要な知識は、中心位Centric Relationが確実に採れる事、そして目で確認することができない顎関節の中で、どのような状態にあるのかを想像できることも大切です。
中心位とは。
・垂直顎間距離に関係なく、顆頭が関節窩内の最後方で緊張しない状態で位置し、そこから偏心運動が自由に行える。
・適切な垂直顎間距離において、上顎に対し下顎が取りうる最後方の位置
・正常な垂直顎間距離において、顆頭が関節窩内の最後方に位置する時の上顎に対する下顎の位置
・顎関節の関節窩の中で顆頭が関節円板に乗って、機能する範囲の最も後方、最も上方左右の真ん中でそこから自由に側方運動できる顎位
向かって左の写真は関節円板に密着して顆頭が動いている理想的な様子です。
右側は、顆頭が下がってしまったために、圧がかからず上下関節腔が開いてしまっている状態です。
Dr.Dowsonによる、中心位採得の様子です。
稲葉先生は、直接Dowson先生の実習も受講しました。
現在の稲葉先生をはじめ、私達が行っている中心位採得方法はこのように、親指と人差し指を使い、軽く顎を押し上げるような感じで、オーストリアのシュラビチェック先生と同様の採り方をしています。
この採り方の利点は、片手が開く事。
中心位のバイトがスムーズに記録できます。
患者様の筋症状は、咀嚼筋の他に僧帽筋にも痛みを感じていらっしゃいました。
特に腰痛と肩こりに悩まされていたようです。
治療前の、EPAとポッセルトのサジタル(矢状断面)とフロンタル(正面)の記録です。
全体的に動きが小さい事がわかります。
患者様の口腔内の様子は、補綴物もなく、大変良好な状態です。
咬合診断にて、中心位(CO)と中心咬合位(CR)のズレを確認することができました。
当初、右側の7番遠心に水平埋伏智歯があったため、右側の干渉が疑われましたが、診断してみると、左側にも干渉があることがわかりました。
リテイナー装着時のDIGMAの記録です。
ポッセルトのフロンタルが大きく動いている事がわかります。
術後の様子です。
EPAテストでは、COとCRの一致に加え、全体的に動きが大きくスムーズに変化しました。
詳しく見てみます。
術前、術後の開閉口では、約2センチほどの差ががあります。
開閉運動において、顎の動きが全く変わりました。
スムーズに関節結節を乗り越えている事がわかりますね。
ゴシックアーチの記録においては、術前のフラフラとした小さな動きから、術後はほぼ一直線の大きな動きに変化しました。
素晴らしい変化だと思います!!
顎関節の音が、あきらかにパチンとかカクッという音があれば、クリック音をとるのは比較的簡単ですが、ゴリゴリといった雑音をとるのは、かなり難しいケースだったと思います。
ひとつひとつ丁寧に診断をすることの大切さを学びました。
右側に雑音がわずかに残っていましたが、翌日患者様からご連絡いただいた内容をご紹介させていただきます!
『週末は本当にお世話になりました。家に帰ってから、主人に見た目に変化があったことを言われましたが、何よりも体調に変化があったように思います。
顎に関しては、やや違和感が残ります。
理由は、術前、自分が感じていたよりも上にある感覚があるためです。
それは好ましい感覚ですが、一応ご報告いたします。
開閉は非常にスムーズです。
雑音が残ったとご報告しておりますが、開閉時、毎回鳴っていたものが、鳴る時もあるに変化し
正直びっくりしています。
昨夜はやや早く眠くなり、そのまま就寝しました。
そのせいもあってか、気になっていた首の後ろ側の凝った感じがないです。
首周りの温かい感覚も継続しております。
腰痛なども軽減しているようには思います。』
ということです♪
治療直後に現れていた、小さな雑音は、開閉時、毎回鳴っていたものが、鳴る時もある・・・
という状態に変化しているとのことです。
治療後、患者様が少し涙ぐむぐらいでしたので、今まで本当に辛い思いをされてきたのだなと感じました。
顎関節症で悩まれている方は、本当に大変な状態なのだなと思いましたし、それを見つけられ、また治療をすることができるのは、歯科医師、歯科技工士であることも再認識しました。
2日間協力いただいた、患者様、そしてご参加いただいた先生方本当にありがとうございました!!
▼歯科治療の本意はやはり咬合であるということを改めて再認識しました。顎関節の治療がここまで科学的に順を追って治療できるということがびっくりしました。