Greeting

社)IPSG包括歯科医療研究会 代表挨拶

IPSG包括歯科医療研究会は、私が1978年ドイツの大学で客員教授をしていたチュービンゲンに程近いアルゴイ地方で、1994年に行われた研修会の際に結成され約30年続いている伝統ある研修会です。

現在日本は65才以上の高齢者が全人口に占める割合が25%を超える社会、すなわち全人口の4人に1人が高齢者であるという超高齢社会を迎えました。これは世界で一番長生きする国であるという証拠です。しかしよく考えてみますと寝たきり老人の多い国でもあるのです。健康な高齢者ばかりではありません。

そこで健康長寿であることが求められており、単に長生きすることだけが目的ではありません。
現在日本人の寿命は男性81才、女性87才ですが、健康で自立した生活をしている高齢者は男性で72才、女性で75才です。健康で充実した生活をするためには、質の良い睡眠をとり、適度な運動をし、良い食生活をすることです。

稲葉 繁 先生

特に食べるということは活力のもとであるエネルギーの補給をすることです。歯科医師の役割はこの食物摂取系を守っています。
歯科と一口に言っても多くの役割を持っています。歯科が関係する範囲は頭の下半分を対象としています。すなわち、歯や顎は勿論のこと、顎口腔系といわれる下顎の骨、上顎の骨それを取り巻く頬、唇、舌、それの付随する神経や血管等多岐にわたっています。

さらにそれに伴う運動系として、摂食、咀嚼運動、嚥下運動があります。これら顎口腔系を包括した医療を行い、国民の健康に寄与するために研修を行っています。その対象としては乳幼児の嚥下から、咬合育成、成人の口腔保健から高齢者の咬合管理までを幅広く研修しています。

私の研修履歴としては、特に1960年代から70年代にかけて、アメリカのナソロジーを勉強しました。咬合器やパントグラフで有名なチャールス・E・スチュアート、ワックスアップ法やリハビリテーションで有名なピーター・K・トーマス、ギシェーの咬合学、ラウリッツェンの咬合調整法、マイオモニターのジャンケルソン等多くの偉大な臨床家の講義やデモを直接学びました。70年代の後半にはドイツに渡り、チュービンゲン大学のシステム化した顎関節症の診断と治療をシュルテ教授から直接学びました。補綴学ではコーヌスクローネ、リーゲルテレスコープ、レジリエンツテレスコープ等の全てをケルバー教授から直接教えていただきました。さらにベルリン大学のアイヒナー教授からは咬合支持の分類を学び、ベルリン歯科医師会にて日本の高齢者歯科と咬合支持について講義をさせていただきました。

稲葉 繁 先生

総義歯関係では1978年に人工歯で有名なイボクラー社の補綴部長であったシュライヒ先生から現在のBPSの前身であるイボクラーデンチャーシステムを学び、その後2018年まで個人的に交流して来ました。その他オーストリアナソロジーのスラビチェック先生、マールブルグ大学のロッツマン教授などから測り知れないほどの知識と技術を学びました。

このような研修歴を多くの臨床家に知っていただけるよう日本歯科大学の教授を定年前に退任し、私の経験を若い歯科医師たちに伝達しようと考え、社団法人IPSG包括歯科医療研究会を立ち上げ、すでに約30年の年月が経ちました。
その結果多くの志を持った歯科医師、歯科技工士などが日本各地で活躍をされています。さらに多くの歯科医師が臨床力と知識を身に着け、研修講師として活躍しています。

これらの研修結果は最終的に国民の健康のために寄与できたと考えています。

IPSGでは研修の5本の柱を掲げております。それは
1. 歯科医療共通の学問としての咬合学
2. 咬合が引き金となる顎関節症の診断と治療
3. 欠損補綴のためのテレスコープシステム
4. 上下顎同時印象を応用した究極の総義歯製作
5. 乳幼児から高齢者までの摂食、咀嚼、嚥下、
さらに咬合に特化した咬合認定医のための一年間コースを開催しています。

日本の保険制度は昭和36年に国民皆保険として始められ、そのため歯科医院に患者が集中したために、できる限り多くの患者を救済しようとする弱者救済の保険制度で、医療の水準も低く医療費も抑えられてきました。

現在我が国は世界第3位の経済太国に成長したにもかかわらず、診療費は低価格に抑えられ、医療水準も必ずしも高いとは言えません。歯科医療は先端技術が取り入れられ、日進月歩に発達してきました。最良の医療を提供しようとしても国の医療費が切迫しているために出来ないことが多くあります。医療はその時代の最も良い方法がなされなければなりません。

セミナーの様子

WHOでは2000年に歯科疾患の大半は感染症であり病気の予防が最も大切であることから、MI(医療行為は最小の介入を行う)というコンセプトから予防中心の考え方が広がってまいりました。
自分の歯で100歳まで噛み、健康で長生きすることが可能となってきましたが、現在中高年の方々は戦後の経済復興のために一生懸命働いてきたために歯や口腔の健康におろそかになり歯を失っている人も少なくありません。その様な方々に最良の技術を提供すことは大変に重要なことです。しかし現在の保険制度は最良の歯科医療の提供は不可能です。

医療には保険も自費診療もないはずです。患者様に最も良い方法を行うための歯科医療の高い知識と技術をIPSGでは各種の研修を企画しています。国民の健康維持に尽くしていただきたくために、ぜひ各種研修にご参加くださるようお願い申し上げます。

IPSG包括歯科医療研究会 代表 稲葉 繁

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