Seminar reportセミナーレポート
’14 3/9(日)『顎関節症の診断と治療』開催されました【前半】
IPSG事務局、稲葉由里子です。
2014年3月9日『顎関節症の診断と治療』セミナー
稲葉先生と、IPSG副会長岩田光司先生のコラボセミナーが開催されましたので、【前半】【後半】に渡り、ご報告させて頂きたいと思います。
現在、日本では顎関節症とオクルージョン(咬合)は関係ないと言う風潮があります。
本当にそうなのでしょうか?
ヨーロッパでは顎関節症とオクルージョンの論文、書籍が沢山でています。
ドイツでは、マールブルグ大学のLotzmann教授、オーストリアではウィーンのSlavicek教授もオクルージョンからのアプローチで顎関節症を治療しています。
こちらは、ラウリツェン、スチュアート、そしてPK.トーマス。
ナソロジーの三大巨匠です。
中心位の概念が違っていたとしても、ナソロジーの全てが間違っていたわけではありません。
歯科医師であるならば、ナソロジーは一度はきちんと学ぶべき大切なことです。
と稲葉先生から話がありました!
稲葉繁が、ドイツへの渡独を決意した、顎関節症の権威 Prof.Schulteの論文について、お伝えさせていただきました。
セミナーの中で、「これ、一番大切です。」と伝えるほど、重要な内容です。
ぜひ、読んで頂きたいと思います!
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【機能分析と理学療法の目標】
ー442名の顎関節症患者の経験からー
Gezielte Funktionsanalyse und Physio-Therapie-Erfahrugen bei 442 Patienten mit Myoarthropathien-
W.Schulte
Dtsh Zahnarzt Z,27:779-795,1972.
新しい論文ではありませんが、当時、顎関節症の治療に取り組んで間もない頃で、診断から治療法がまだ不透明であった時に、各種の論文を漁っていた際に出合った論文で、慣れないドイツ語を読み、大変システム化し、明快に診断から治療法までを、多くの患者をもとに体系づけたもので、1970年のW.Schulteの論文に出合い、頭の中が整理されたことを今も記憶しています。
またドイツへの留学を決意させてくれた私にとって忘れる事の出来ない論文です。
1978年にドイツチュービンゲン大学に留学し、Prof.W.Schulteの講義を2週間にわたり、早期から夜遅くまで聴講し、その整理された内容の高い講義に感銘しました。
442名の顎関節症の患者を詳細に分析し、診断から治療法をシステム化し、90%の症例で、この方法が応用できる事を述べています。
患者の性別では、女性が71.2%、男性が28.8%であり、年齢層を10才ごとに分けると21才から30才までの患者が最も多いのがわかりました。
診断は疼痛および運動障害の診査を行い、自発痛、運動痛および圧痛が左右どちらにあるか、また開口時の下顎の偏位が左右どちらにあるかをもとに、チャートを用いて、5つの典型的なシェーマを選択し、そのシェーマの内容と患者の症状および口腔内の状態を比較し診断します。
1例をあげると、患者の主疼痛側が右側にあり、下顎の側方への偏位が右側に存在する場合、上記のシェーマを選択します。
この場合の疼痛の原因としては、右側の運動に作用する筋の過緊張があり、早期接触および滑走右側に向かう、また就寝時の体位と主咀嚼側かどちらを質問します。
最大開口位で顎関節のレントゲンを撮影してみると、右側は前方に移動せず、左側は、前方に滑走しているはずです。
口腔内の観察では、このような患者では、
右側においては、
・上顎の智歯の挺出
・下顎智歯の慢性炎症
・側切歯から第一大臼歯にかけての偏心咬合とそれにともなう咬耗面がある
・咬合支持を失っており、左側への偏心咬合がある
左側においては、
・下顎智歯の挺出
・上下顎大臼歯部の早期接触が認められる
・義歯の沈下等の咬合不均衡がある
筋の触診では右側の顎二復筋後腹、咬筋、および側頭筋の疼痛、左側の外側翼突筋、側頭筋の疼痛が認めらます。
以上のような診断をした結果90%の人がNo.1~No.5までのシェーマに入り、これをもとに治療法の決定を行います。
治療法は主に4つの段階を踏むが、第一段階である理学療法や咬合調整で2週間程度で治癒に向かい、20%の人は2ヶ月以上を要し、11.2%の人は、他の原因であったと述べています。
右側に痛みを訴えたならば、さらに最大開口していただき、下顎の側方偏位の方向を調べてみます。
右側に偏位が認められた場合は、上記の図に示した状態が認められる事が多いはずです。
多くの場合、顎関節のX線写真では、最大開口位で右側はほとんど位置の異常は認められないか、あるいはわずかに後方にあり、左側は顆頭が前方に位置しています。
口腔内を観察してみると、右側では下顎の智歯が欠損し、上顎の智歯が挺出しています。左側に目を移してみると、下顎智歯の挺出があり、下顎の前方運動を妨げています。
大臼歯部の咬頭干渉や、不正なテコ現象、早期接触、不正咬合や義歯の異常な咬耗が認められることが多くあります。
このような場合、筋の触診にいては、右側では咬筋、側頭筋、顎二腹筋後腹、後頸筋群に、左側では側頭筋および外側翼突筋に圧痛が認められることが多いです。
以上のように、主疼痛側が右側にあり、開口時の右側への偏位が認められる場合にかなり当てはまる事が多いのですが、同様の症状は主疼痛側が左側にあり、下顎の偏位が右側にある場合も認められます。
これとは逆に、主疼痛側が左側にあり、下顎の偏位が左側に認められる場合や、主疼痛側が右側にあり、下顎の偏位が左側に認められる場合は、前記の状態とは正反対になります。
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まずは、患者様がいらっしゃったとき、口を開いていただく。
S字状カーブから、様々なことを読み解くことができるようになって頂きたいと思います。
ということで。
後半はIPSG副会長岩田光司先生の講演をお伝えします!