Seminar reportセミナーレポート
’16 4/9,10(土,日)『顎関節症ライブ実習コース』が開催されました②
『顎関節症ライブ実習コース』2日目です。
前日に印象採得した模型を、咬合器に付着し、チェックバイトにて顆路調整を行いました。
その際、右側の矢状顆路角は30度、側方顆路角は10度。
左側の矢状顆路角は30度、側方顆路角はマイナスと出ました。
臼歯の傾斜により顎の角度が消されてしまっている可能性があるため、ランディーンによる側方顆路の平均値、7.5度の平均値に設定し診断を行いました。
(このあたり、なかなか難しいと思います。
IPSGで開催される『咬合認定医コース』または、次回開催される『咬合治療の臨床』にて詳しく学んでいただけると思いますので、ぜひご参加ください。)
「咬合器にマウントする時に、重石を乗せたりゴムで縛ると教わったのですが、どうなのでしょうか?」
との質問に、
「膨張率の低い石膏を使っていますか?咬合器は頑丈なものですか?それを大前提として、咬合器に重石を乗せてはいけません。
ぎゅーっと押し付けて、パッと離した時の収縮の方が大きいということを、大学で実験も行いました。
従って、押えつけず、そのままにしておく事が大切です。」
稲葉先生は、KaVo のプロター咬合器の開発にも携わりました。
その時の資料と、開発者のラングさんとのやり取りについても説明がありました。
さて。
顆路とは側頭骨の関節窩に対して、下顎頭(顆頭)が関節円板を介して、顎が動いていく状態のことを言います。
その中で、下顎が前方に動いていく道を『矢状顆路角』といいます。
側方運動では、平衡側で矢状顆路角の前内下方を通ります。
これを『側方顆路角』といいます。
通常、この矢状顆路角、側方顆路角は咬合平面に対する角度で表し、咬合平面は、カンペル平面(補綴平面)とほぼパラレルであるため、カンペル平面となす角度としてとらえることができます。
ギージーは矢状顆路角は平均33度としています。
側方顆路角は矢状顆路角より、さらに内方を通るため、角度は5度程度急になります。
矢状顆路角と側方顆路角のなす角度をフィッシャー角と呼んでいます。
フィッシャー角は5度です。
さらに、これを水平面に投影した角度をベネット角といいます。
その角度はギージーによれば、13.9度でありますが、ランディーンによれば、下顎の側方運動開始から4ミリのところで、サイドシフトとよばれる動きが現れ、これをイミディエートサイドシフトと呼んでいます。
最初の4ミリを超えると、差がなくなり、その平均値は7.5度で個人差はみられません。
従って、側方顆路角は平均値7.5度で合わせていただければ、ほぼ問題ありません。
こちらは、Dr.Okesonの顎関節の本から引用し、説明をさせていただきました。
上図は、関節円板が密着して動いている様子。
そして、下図は、もう少しで関節円板が前方転移をしそうなイメージです。
今回の患者様の顎関節はこのような状態ではないかと推移します。
顎関節の解剖をよく理解しておくことも大切です。
外側翼突筋のUpper headは、関節円板に停止。
そしてLower headは、下顎頸部に付着しています。
特に外側翼突筋Upper headは、咬合面の形態と密接に関わっています。
今回は、皆様の熱いご要望に応じて(笑)スプリント製作も実習しました。
スプリントを製作する機械は、ドイツのエルコデント社。
リラクゼーショナルスプリントで、フルバランスの咬合を作ります。
犬歯誘導型だと、関節を圧迫してしまいます。
特に、関節円板が落ちている患者様に犬歯誘導型のスプリントを装着すると、関節を突き上げてしまい、痛みを発症するため禁忌だと覚えておいていただければと思います。
スプリントは1ミリのプレートにレジンを一層盛り上げ、たわまないようにし、フルバランスで咬合を作ります。
スプリントの外形線です。
参考になると思うので、掲載させていただきます♪
歯頸線に沿わせます。
上顎はアンダーカットに入ると、外れ難くなるので一部だけ覆います。
KaVo ARCUS DIGMA2による、顎機能運動の計測、治療前の状態、そして今回はスプリントを入れた状態でも計測を行いました。
そして、治療に入ります。
ここで、稲葉先生、28ミリの開口量だと咬合調整が難しいため、マニュピレーションを行いました。
関節円板に下頭をより密着させ、痛みなく開口できるようになりました♪
この時点で、28ミリから、46ミリまで、約2センチ開く事ができるようになりました。
途中から患者様が、
「音が消えました!」
とおっしゃっていました。(正確には少し雑音が残っていましたが、患者様の感覚はだいぶ違うようです。)
咬合調整に用いる咬合紙はブルーレッドレーダー。上顎に青、下顎に赤の色がつくようにし、最後に咬合紙がなしのゼロミクロンの状態での咬合調整を行える咬合紙として稲葉先生が愛用しています。
咬合器で診断した場所と同じ部位を調整。
歯に溝を切る、窩を少し深くすることで、関節円板を密着させました。
治療終了後のDIGMAです。
明らかに治療前、後のデータが変わりました。
こちらに関しては、『顎関節症ライブ実習コース』〜その3〜の考察でお伝え致します!
最後に。
「開閉は非常にスムーズです。私が感じていた、顎の音が取れて、正直びっくりしています。
雑音が少し残ってはいますが、私が今迄悩んでいた物とは全く違います。
意識せず、口を開くことができたのは、記憶にないぐらい遠い昔です。
気になっていた首の後ろ側の凝った感じもなぜか気になりません。
顎の周り、首周りが温かい感覚があります。
先生方、お忙しい中2日間本当にありがとうございました。」
と嬉しい感想をいただきました。
治療後、一緒にお弁当を頂きました。
わずかな咬合調整により、患者様の感覚は大きく変わり、顎の周りの筋肉の緊張が取れ、 沢山嬉しい感想をいただき、受講生皆が嬉しく思いました。
やはり、顎関節と咬合は密接に関わっているのですね♪
『顎関節症ライブ実習コース』〜その3〜では、治療前、後のデータを比較したいと思います!
▼レポート③はこちら
https://ipsg.ne.jp/gakuliveseminar201604-report3