Seminar reportセミナーレポート
’17 5/14(日) 『咬合治療の臨床』が開催されました②
IPSGセミナー「咬合治療の臨床」午後の部の模様を報告させていただきます。
午前に引き続き、IPSG代表稲葉繁先生による講義が行われました。
現代人の祖先の骨格に見る咀嚼機能や咬合様式、古代の恐竜や様々な動物における歯牙の発達について説明されました。
このような、現代の人間の口腔内の話だけにとどまらず、そこに繋がる広範囲における考察は、稲葉繁先生独特の切り口であり、真骨頂です。
その後、IPSG副会長の岩田光司先生より、実際の咬合治療の臨床症例を解説していただきました。
最初に、顎関節の形態や円盤の位置、診療時に確認する疼痛の有無や音の種類、顎運動の速さなどを説明されました。
その後、KAVOの顎運動測定器アルクスディグマの使用方法、頭部おける各筋肉の解説、咬合診断時におけるフェイスボウトランスファーについて解説していただきました。
次に整体院から来られたという、右側筋肉の痛みや片頭痛、座骨神経痛に悩む50代女性の症例です。
模型を咬合器に付着診断し、触診も行った結果、側方運動時におけるインレーの干渉や、上顎前歯部舌側における強い接触が判明しました。
その後、調整を行い、ほぼすべての症状が改善に向かったとのことでした。
次に、肩の違和感、口が開きにくい、顔が歪んでいるという40代男性の症例です。
前歯部の被蓋状態や誘導状態、第二大臼歯の咬耗、シャイニースポット、食片圧入や智歯、舌圧痕や口蓋垂壁を確認します。
その後、最も重要な、中心位のズレを診断します。顎運動測定器とドップラー聴診器を使用し、顎関節の状態を精査します。
咬合診断のため、リムロックトレーを用い印象した後、フェイスボウトランスファーします。
中心位にて咬合採得し、模型を咬合器に付着し、咬合、審美分析を行います。
その結果、臼歯部の干渉があり、一級の梃子作用が疑われ、側方運動時には二級の梃子作用も影響していると考えられましたので、咬合調整を行います。
最終的に患者様の感想の動画を拝見すると、歯を少し削って調整しただけなのに、大幅に症状が改善されたことに驚かれている様子でした。
次に噛めない、発音しにくい、審美性をよくしたいという50代の男性の症例です。
咬合を作っていくという方向性のもと、SIバイトトレーにて咬合採得し、咬合器に模型を付着し、内冠制作の後、上下同時印象を行います。
模型制作、排列試適を実施し、レジリエンツテレスコープを用いたフルデンチャーを制作します。
施術後にガムやピーナッツなどを食べていただく動画では、なんの問題もなく、患者様も非常に満足されているようでした。
最後に質疑応答の時間が設けられ、終了となりました。
今回は、第2期咬合認定医コースを受講される先生方も揃われ、たいへん多くの方々にご参加いただき盛況のうちに幕を閉じました。
レポート/Weber Dental Labor Gmbh 歯科技工士 石川太一
受講された先生方の感想
■今はまだまだであることもよく分かっていますが、これからも学び、もっと上を目指そうと思います。本当はコースを受講をしたいのですがまだ子供が幼く、地方のため、現在は難しいのが残念です。もしおすすめのDVDや本があればコースを受講する前の予習として知りたいので教えてほしいです。
■人類学の話から骨格の話に直接結びついていたことが驚きでした。咬合の勉強、総義歯の勉強に活かしていきたいとおもいます。
■稲葉先生からのお話のなかで赤ちゃんのおしゃぶりは必須とのこと驚きです。(くせになるから駄目!という認識でしたので)これから出産される患者さんにお伝えしたいです。コース2回目以降も宜しくお願い致します。
■研修医なので知識や経験数もまだまだ少ない状態ですが、基礎の部分からお話をしてくださったのでとてもわかりやすかったです。本日は講義のみでしたが、今後は実技もあるセミナーに是非参加させていただきたいと思いました。
■「咬合はおもしろい」稲葉先生の講義を聞き始めてからそう思えるようになりました。これまで咬合のセミナーは色々受講しましたが、苦手意識は高まるばかりで面白くなかったです。今では稲葉先生のセミナーにはまっています。何回も受講することで少しずつですが理解できるようになってきました。これからも宜しくお願いします。