Seminar reportセミナーレポート
’14 6/1(日)『ハーモニックオクルージョン~審美と咬合のハーモニー~』開催されました【後半】
こんにちは。IPSG事務局、稲葉由里子です。
『ハーモニックオクルージョン』 〜審美と咬合のハーモニー〜が開催されたので、ご報告させていただきます。
前半は、稲葉歯科医院 佐藤孝仁先生、後半は私がレポートいたします。
〜後半〜
『ハーモニックオクルージョン』 〜審美と咬合のハーモニー〜は、 稲葉先生が、1991年から4年間に渡り、日本歯科評論に連載したコラム「美の追究」をもとにした内容です。
▼エステティックとは何か
仏語のesthetiqueは土佐藩下級士族の家に生まれ、明治時代にフランスに留学した中江兆民(1847〜1901)の訳語で『美学』としているが、文豪森鴎外が『審美』と訳している。
というお話があり、『審』はウ冠に番と書き、家で番を行う、すなわち裁判を行うこと。
『美』とは、羊が大きいと書き、昔中国で家畜の中で一番姿が美しく、性質も善とされているので美、善を現わす意味に使われている。
美は大きな羊という意味で、最も美しい生贄として神にささげた。
という、『審美』の本当の意味を知る事ができました。
歯科界における審美は材料技術が先行して、修復術のみに重きが行われていますが、医療においては美醜はなく、人それぞれに適応した美がある。という奥深い話を聞く事ができました。
審美と咬合のハーモニーに大切なのは、前歯と臼歯の融合すなわちアンテリアーガイダンスの重要性について詳しくお伝えさせていただきました。
前歯にはEstheticsとFunction 審美と機能の役割があります。
審美的には、色彩と解剖学的形態、そして、機能とは、発音や機能する時の形態が関わりがあり、このふたつの要素を兼ね備える必要があります。
昨今、審美ばかりに目が向けられているように感じますが、材料に分析と機能をどのようにつけていくかという事が、非常に大切だということを今回のセミナーで学んでいただきたい。という話がありました。
アンテリアーガイダンス、前歯の誘導について。
模型上で前歯を削り、臼歯の矢状顆路角を計る実験です。
ギージーは矢状顆路角の平均は33度、 この矢状顆路角+7~10度を与えるのが理想的で、+20度、25度だときつくなるから注意が必要、と稲葉先生の話がありました。
稲葉先生が補綴科在籍の時に実験した、測定値で、左右の矢状顆路角の平均値、矢状切歯路角の記録をまとめたものです。
前歯の誘導で臼歯が離れる量ディスクルージョンは1.5ミリで十分です。
切端の噛みこみの深さが2ミリ以上の場合は注意が必要、ディープバイトは関節に悪影響を及ぼす、ニアセントリックは、矢状顆路角の影響を受けやすいという話がありました。
こちらは、医局員の先生に協力していただいた症例で、ちょうど前歯の治療をしていたので、アンテリアガイダンスを強くしたらどのようなことになるのか、テンポラリークラウンで実験していただいたものです。
すると・・・臼歯で1センチもディスクルージョンしてしまいました!
これでは、関節を痛めてしまいますし、前歯ポーセレンは確実に破折してしまいますね。
オーバーバイトの深さにより歯冠軸が異なっているのか?あるいは咬合小面の角度は何によって影響されるのか?アンテリアーガイダンスの実効値はどの程度であるのか?を計測したものです。
『美の追究』の本に詳しく計測値が書かれていますが、咬頭嵌合位から下顎が前方に滑走を始めてから3ミリの間では、急激に角度の変化があり、これは臼歯を理解させるための面だと考えられます。
年齢と咬耗は相関することから、咬合小面は前歯の修復において自然感を出すために考慮しなければならない項目です。
例えば、このような症例を見た時、どのように患者様に説明をさせていただいたらよいでしょうか。
なんとなく・・・ではなく、審美の法則に基づいてお伝えする必要があります。
アピアランスガイド、基準線についての説明です。
アピアランスガイドの線を引いて模型上で患者様にご説明させていただくことが重要です。
◆FRC フェイシャル・リッジ・クレスト (歯冠の長さ、歯軸の方向を表す線)
◆LA ライン・アングル (歯冠の幅を表す線で、隣接面に移行する歯軸線)
◆GCC ジンジバル・カンター・クレスト (歯冠を横切りPCに関係する豊隆線)
◆ICC インサイザル・カンター・クレスト (審美性に関係する豊隆線)
その他にも、CF-line(セントラルフォッサライン)、LI-O-line(リンゴオクルーザルライン)、BO(バッカルオクルーザルライン)の説明がありました。
そして、修復させていただいた状態です。
ブラックスポットも消えてアピランスガイドが揃っていますね!
自然界における黄金比例、螺旋比例。
歯の黄金率についても説明がありました!
自然界で最も美しいとされる黄金率、1:0.618の法則。
デューラーの自画像、彼の絵画の構成は黄金率が基準となっていますし、自然界に見られるオウム貝、北斎の絵画の構図などは、この法則により描かれています。
当時、稲葉先生は、自然界で作られたものに、いつもこの法則をあらゆる物に当てはめて、えんぴつで線を引いていたのを思い出します。
そして、歯の黄金率が『1:0.618の法則』に当てはまることは意外と知られていません!
今回のセミナーはドクターだけではなく、テクニシャンに方にご参加いただいたので、様々なヒントもお伝えさせていただきました。
例えば、
人間の口には光源がないこと。
光の反射で口元を見る。
南側の明かりは変化が激しいので、北側の光で仕事をすると、日間変動が低いこと。
そして、横から見るのではなく、頬があることも考慮して、前方から見る事を常に意識することなどをお伝えさせていただきました。
シェードセレクション、モールドセレクションについてもご説明させていただきました。
現在、一般に歯の形には
長方形SQUARE (S TYPE)
方形SHORT SQUARE(SS TYPE)
尖型TAPER(T TYPE)
卵円形OVOID(O TYPE)
混合形COMBINATION(C TYPE)
の5形を使う事が多いです。
顔の形と歯の形が相関関係にあるならば、日本人の顔は平坦で角が丸みを帯びた比較的角型の縄文型、あるいはやや顔が長くなった長方形で、美人顔の弥生型などが多く見られ、歯の形もSS型やS型が多いです。
スクエアタイプは全体に面長な男性、あるいは活動的な女性に適合する形態で、切端から歯頸部にかけての幅がほぼ同じで長径がやや長いです。
ショートスクエアタイプはスクエアに対し長径を短くした形態で、男性に適合し、力を使う職業やスポーツマン、老人に適しています。
テーパータイプは顔の幅が狭く面長な人で、中年以後の女性に適合しますが、使用頻度は低いです。
オボイドタイプは丸顔で明るくかわいらしい女性に適合し、使用頻度が高いです。
コンビネーションタイプは男女どのようなタイプの人にも適しています。
一般的で個性は強調できませんが、無難で失敗がないと言われています。
稲葉先生の全顎セラミック症例。
技工士、川崎従道先生とのコラボレーション。
治療前、治療後、そして6年経過、10年経過・・・
そして15年経過症例となりました。
適切なアンテリアガイダンス、咬合の付与により、ポーセレンの破折もなく、歯茎部のマージンは装着時そのままです。
15年経過した長期症例は今回のセミナー、ハーモニックオクルージョンの結晶だと思いました。
先生方からも感想をいただきましたので、少しご紹介させていただきます。
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▼自分がどのような歯科医師となるべきか、目標を決定するために何かきっかけが見つかればと思い、受講致しました。連合印象を行う際は寒天の硬化を待ってから、アルジネート印象を行うべきというお話は目から鱗が落ちる思いでした。
臨床実習で何度か連合印象を採りました寒天が流れてしまって重要なマージンの部分に残っていなかったので次回から先生のやり方を真似させて頂きたいと思います。
稲葉先生は多分野にわたって造詣が深くていらっしゃるので歯科と直接関係ない分野に関しても色々とお話を伺いたいと思います。
大学病院で行われている臨床とは全く違った世界があることを知り、非常に刺激的な一日でした。臨床実習ではリーゲルテレスコープの臨床を見る機会がなかったのでいつか自分でやってみたいと思います。(日本歯科大学6年生 学生)
▼生体にあった咬合、審美性を勉強したく受講しました。アピアランスガイドは、スタモの際、実行したいと思いました。患者さんとのコンサルの際に利用したいです。
実際の中心位の採得の方法、臨床における治療計画及び手順をもっと知りたかったです。フルハウスの治療計画、手順をもっと勉強したいです。その際にフルデンチャー、パーシャルデンチャーの考え方を今一度学びたいです。今後も参加したいと思います。
▼メタルボンドでもきれいな歯並びを評価する方法が今までわからなかったので勉強になりました。
▼審美に対する考え方が変わりました。早速明日からの診療に応用したいと思います。私は美術館巡りが好きなので、今後目線を変えて見てみたいと思います。有難うございました。
▼稲葉先生のテレスコープ以外の貴重なケースを見ることができて良かったです。上下フルマウスのケースの15年経過したスライドは素晴らしかったです。感動しました。
▼天然歯の形態を今まで追求してきまして、もっと良いバランスのとり方を学びたいと思いまして、受講に至りました。等比螺旋がすごく興味があり、美しいと単純に考え感じられるものも理解しようとする人間の本質を感じられました。
美術品に興味はありましたが、それはあくまで美しいと感じることだけで満足していました。それをもっと深く理論づけて理解することの楽しさを発見しました。有難うございました。
▼審美・衛生・咬合・・・バランスのあるところに美がある。常々稲葉先生が言われているように、バランスのとれた治療が大切で有ることを再確認いたしました。
▼本日、ハーモニックオクルージョンに参加させて頂きましたが、今回で3回目位になると思います。
参加された先生方で四国より考えている方や日本歯科大学6回生の方、若い方々の勉強には感心致しました。
又、自分も負けていられない気持ちになりました。先週5月25日顎咬合学会の認定試験も終わり、平成26年度も半分になりましたので、目標をもって治療に取り組みたいと思います。
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今回、沢山感想をいただきとてもうれしいです。
ご参加いただいた先生方、本当にありがとうございました。
私自身、毎回新しい気づきがあります。
聞くたびに日々の臨床への応用を思いついたり、学生時代に聞く、歯科医師になってから聞く、20代、30代、40代とそれぞれ感じることが違う、奥の深いセミナーだと思いました。
『美の追究』の内容は4年間かけて掲載された稲葉先生の審美の賜物だと思います。
とても1日では学びきれなかったと思いますが、ぜひ、今回プレゼントさせていただいた本を見直して、臨床に応用していただければと思います!
咬合認定医コース開催のご案内
IPSGでは、歯の治療だけに注目せず、歯科医師が担っている「恒常性の維持」の1つである食物摂取系を支える歯科医療を目指しています。
そこでこの度、IPSGが強みとしている「咬合」に特化し、将来の包括的な歯科医師の輩出を目標に、咬合認定医コースを開始することとなりました。
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