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下顎総義歯の舌側臼歯部の床縁は、どこの位置まで伸ばせばよいでしょうか。

Q:下顎総義歯の舌側臼歯部の床縁は、どこの位置まで伸ばせばよいでしょうか。

この記事を監修した人

稲葉先生
IPSG包括歯科医療研究会 代表 /
元日本歯科大学 教授稲葉 繁

1964年に日本歯科大学を卒業後、同大学院を修了し、補綴学教室の講師、助教授を経て、1992年に高齢者歯科学教授、1999年に補綴学第3講座教授を歴任。1978年にはドイツ・チュービンゲン大学で客員教授として活動。
1994年、ドイツ・アルゴイ地方での研修会を契機にIPSG包括歯科医療研究会を結成。30年以上にわたり、現在も包括歯科医療の発展に寄与している。
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Q.下顎総義歯の舌側臼歯部の床縁は、どこの位置まで伸ばせばよいでしょうか。
A.下顎義歯の舌側形態のあり方についてのご質問ですね。

最近では吸着する下顎義歯の製作法などと評判を呼んでいますが、そのメカニズムを知ればそんなに難しいことはありません。

下顎の天然歯列の形態は頬側は頬筋の力、舌側は舌の力のバランスの取れたところに形成されます。

総義歯においても、全く同様に頬筋の力と舌の力のバランスの取れたところに、人工歯の排列を行いますと、義歯の安定はよくなります。
したがって、元歯のあった場所に人工歯を排列すれば安定させることができるわけです。

義歯の概形を考えてみますと唇側と頬側は歯槽堤の固定部と可動部の境界に義歯の辺縁が来ます。
その時、後縁は必ず臼後三角を覆います。
ここを被わないとここからエアーの浸入があり吸着ができません。

舌側の形態は口腔底まで延ばします。
口腔底は顎舌骨筋で形成されており、嚥下運動、吸引動作などに起こる舌の動きにより上下に動きます。

したがって、舌側形態は義歯の安定に大変大切です。
これまで多くの指導的な方々は、義歯の安定のためには舌側の後縁はできる限り延ばすように教えてきましたが、特に顎舌骨筋窩まで延長させなさいと指導されてきました。

しかし後縁を延ばしすぎると舌の運動を妨げてしまい、舌を前に出したり、唇をなめたりすると義歯の後縁が浮き上がり義歯は外れてしまいます。

また、この位置は顎舌骨筋線を境に大きなアンダーカットがあり、しばしば義歯の後縁の疼痛を招いてしまいます。

したがって、義歯の後縁は顎舌筋線の下まで延ばすことなく、ギリギリの所で内斜線に沿って斜めに臼後三角の所まで切り取ってしまいます。

その結果、多少義歯の安定は悪くなる可能性があります。

そこでその対策としてサブリンガルルーム(舌下隙)を利用し、十分延長しさらに厚みを付け、舌下隙から浸入するエアーを遮断するように舌との間を埋めます。

したがって、サブリンガルルームの厚みは十分につけるといいと思います。
この形態を印象で表すには印象中に口を閉じ、さらに印象材が硬化する前に嚥下をしてもらいます。

このような印象を採るには、上下顎同時印象を行うのが最善だと思います。
IPSGでは毎年一回ライブで研修を行っていますので、ぜひご参加ください。

開催予定のセミナー

開催日 セミナー名 講師(予定)
2025.7.19.SAT〜2025.7.21.MON ’25 7/19~21(土・日・月祝)総義歯ライブ実習コース 稲葉繁先生
岩田光司先生
2025.8.2.SAT〜2025.8.3.SUN ’25 8/2〜 8/3(土・日)顎関節症ライブ実習コース 稲葉繁先生
岩田光司先生
2025.11.16.SUN ’25 11/16(日)筋機能療法・エントレ 稲葉繁先生
飯塚能成先生
2025.12.14.SUN ’25 12/14(日)IPSG Scientific Meeting 2025 ~ 学術大会 〜 現在未定

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