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Q:シュトラックデンチャーを推奨していた、シュライヒ先生はどのようなことを教えていらっしゃったのでしょうか

Q.シュトラックデンチャーを推奨していた、シュライヒ先生はどのようなことを教えていらっしゃったのでしょうか。
A.ご質問ありがとうございます。
最初にIPSG包括歯科医療研究会発足時に講演をしていただいた、Dr.シュライヒについて少し触れておきます。

1978年夏にリヒテンシュタインを訪れたときに、イボクラー社の補綴部長として初めてお会いしました。
彼はドイツ人でミュンヘンの生まれです。

ミュンヘンで歯科技工士の資格を取り、その後矯正学を学び、Dr.の資格を取りました。

その後リヒテンシュタインのイボクラーの補綴部長として迎えられ、イボクラーのデンチャーシステムを完成させ、世界中に普及をしました。現在のBPSの前身です。

Dr.シュライヒはイボクラーデンチャーシステムで大きな業績を残しました。

1. ナソマート咬合器はデュッセルドルフ大学のべドガー教授が開発しました。

2. 印象はミュンスター大学のマルクスコルス教授のイボトレーを用いました。

3. ゴシックアーチ描記のためのファンクショングラフは、ポーランドワルシャワ大学のクラインロック教授からヒントを得たものです。

4. 人工歯はチュービンゲン大学のDr.シュトラックのオルソシット人工歯を用いています。

5. 重合方法はイボカップシステムを開発しました。

これらのまとめ上げ総義歯製作の体系を創り上げたのが、Dr.シュライヒです。特に義歯のコンセプトは、尊敬するDr.シュトラック義歯の理論を応用しました。

特にそれまでの義歯の基本はヨーロッパで主に用いられていたギージーの歯槽頂間線法則でしたが、それによると上下の人工歯の力の方向は歯槽頂を連ねた方向となり、どうしても上顎は小さくなる結果、上顎の頬側に空間が生じてしまい、義歯のボーダーの封鎖が難しいため維持が悪い結果となってしまいました。

Dr.シュトラックは歯槽提とは関係なく口腔周囲筋の力を借りて、元あった場所に人工歯を排列し、義歯を安定させる方法を考えました。

Dr.シュライヒはこの理論を正確に再現しようとして、上記の1~5までの構成を創り上げ、素晴らしい義歯を完成させました。

しかし1994年にDr.シュライヒがイボクラー社を退職して間もなく、彼の弟子であったMr.フリックが補綴部長となり、複雑なデンチャーシステムを単純化し、新たにBPS(Biofunctional Prothetic System)として応用されるようになりました。

IPSGで行っている上下顎同時印象法による総義歯はイボクラーのデンチャーシステムをさらに向上させ、シュトラックのデンチャーを確実に再現するように改良を加え、1996年に新しいデンチャーシステムを完成させ現在に至っています。

1978年ドイツ、チュービンゲン大学の客員教授として留学をしていた際に、Ivoclar社主催の総入れ歯のセミナーを受講しました。
その時の補綴研修部長が、Dr.シュライヒです。

先日、Dr.シュライヒからシュトラックの人工歯について詳細な説明を受けました。
9枚もの長いお手紙の一部を記載します。

臼歯のOrthosite人工歯は、Dr.Rainer Strack/Tuebingen によって開発されました。
彼は約70年前、尖端の尖ったピラミッド型から臼歯を排列することを考案しました。

彼は様々な咬合による下顎骨の動きの研究を行いました。
それは小さなピラミッド型の角をお互いに寄せ合って並べると、その間の部分が咀嚼によるすべての歯の動きをカバーすることを発見しました。

その後ピラミッドを寄せ合わせ、その角を削り天然歯の形態に再現し人工歯としました。

これをチュービンゲンの技工マイスターであるオイゲン・シュライヒが咬頭傾斜角25度の人工歯を作り、フルバランスドオクルージョンを創り上げました。

そのフルバランスドオクルージョンは独特なもので前歯の誘導をすべて無くし、下顎前方位では下顎第一大臼歯の近心斜面が上顎第一小臼歯の延伸斜面に沿って誘導する。

さらに側方運動において、作業側では下顎第一第二小臼歯の頬側遠心斜面が上顎第一小臼歯と第二小臼歯の頬側近心斜面に接触し誘導する。

そのとき平衡側では上顎大臼歯の舌側咬頭内斜面に下顎頬側内斜面が誘導し、義歯を安定させるという云うものです。

シュトラックデンチャーは、わが国ではあまり知られていませんが、その独特な形態で安定した下顎義歯の吸着が得られ、
機能時にも安定良くけむことができる非常に優れたものであると思います。

シュトラックデンチャーの特徴は
1. 義歯の安定維持にはデンチャースペースの再現が必要である。

2. シュトラックの開発した人工歯オルソシットにより咬頭嵌合させるフルバランスドオクルージョンの再現

3. 人工歯排列は本来有った所に歯を並べ、舌側からは舌の力、
頬側からは頬筋の力、前方からは口輪筋の力のバランスを取り義歯を安定させる。

そのための具体的な技法として、デンチャースペースの再現にはイボトレーを使用した上下顎同時によるスタディーモデルの印象。

イボクラーのシュトラック設計による人工歯オルソシットを使ったフルバランスドオクルージョンによる確実な義歯の安定であるとしました。

Dr.シュライヒは、1926年生まれ、今年90歳となりますが、詳細な記憶力と文章力が昔と変わらないことに驚かされました。

Dr.シュライヒの手紙の一部をお伝えします。

Ivoclar社退職を余儀なくされた後、Onatomatは計画から外されました。

私は自宅で義歯と器具の改良に励みました。人工歯は天然歯と同じように上手く機能すべきです。

歯のない患者の咀嚼圧は約20~30キロに対し、全ての歯が揃った若者の咀嚼圧は70~90キロと証明されています。

胃にとっては、よく咀嚼することが必要です。私達は、その最善の可能性を患者に提供しなければいけません。

私はより良いIvocapシステムも作りました。普通にIvocapで重合することは、35度でエアコンなし(ハワイのような)状態では不可能です。また、2500メートルの高地でも問題があります(南アメリカ)。

水が70~80℃で沸騰してしまうからです。
Ivocapシステムは、100℃のお湯が必要なのです!

以前、徳島県四国で研修の時に製作した患者の下顎骨は、テーブルのように平たく、Ivocapシステムの大きなフラスコの設計図を描きました。

Dr.Strackの理論、そして私のアイデアを継承している、稲葉先生のセミナーが上手くいくことを願っています。

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IPSG技工インストラクターであり、Dr.シュライヒの技工を務めていた、故岡部宏昭先生が、シュトラックデンチャーの特徴について、お答えいただきました。

▼シュトラックデンチャーとBPSの違いは何でしょうか?
https://ipsg.ne.jp/strack-denture-qa/

岡部先生は、原型はシュトラックデンチャーですが、シュライヒデンチャーと称して良いのでは・・・
シュトラック、ベトカー、マルクスコルス、ランディーン、ゲルバー、クラインロック、カーン、そういった先生方の理論を集約したのが、シュライヒシステムであり嘗てのIVOCLAR Prosthetic System です。
とおっしゃっています。

実は、私が歯科大学に入る前、Dr.シュライヒのリヒテンシュタインのご自宅に一週間ほどホームステイをさせていただいたことがあります。

当時は、そんなにスゴイ方だと全く思わず・・・父である稲葉先生の仕事仲間ぐらいにしか思っていませんでした(^_^;

サボテンが趣味で、毎日数時間、永遠とサボテンの話を聞かせて頂いた事を思い出します。
そして、自転車もお好きで、2人で毎日お城巡りをしました。

私との会話の中に一切歯の話題がなく、それ以外の趣味があまりにも豊富で、どんな事にも興味を抱く方であったからこそ、このような素晴らしいシステムが開発されたのでしょうね。

Ivoclarの名前の由来ご存知でしょうか?
「Ivory」アイボリー「clear」明るいから取ったそうですよ。

他にもDr.シュライヒから、稲葉先生の3点でゴシックアーチを描記する方法にさらに便利な方法をアドバイスをいただいているので、検討中です。

平たい顎の方のIvocapの重合、結局どうなったのでしょうね(^_^)
Ivocapシステムは、手間ひまがとてもかかりますが、それだけの精度が期待できる、素晴らしい重合方法です。

私は患者様にも、重合方法の違いについて説明することがありますが、とても喜んでくださいます。

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