Seminar reportセミナーレポート
’17 7/15,16,17(土,日,月祝)『総義歯ライブ実習コース』開催されました②
「総義歯ライブ実習コース」1日目に引き続き、2日目の模様をお届けいたします。
2日目は、午前中に個人トレーを用いてゴシックアーチの描記と、このシステムの醍醐味である上下顎同時印象を行い、午後に蝋義歯の試適を行います。
こちらが、上下顎同時印象用トレーです。
ゴシックアーチ、フェイスボートランスファー、咬合採得を同時を行うための大事な行程です。
トレーの口腔内への試適は、咬合器上と一寸の狂いもなく適合しました。
これは、SIバイトトレーの咬合採得の精度が高いことを意味すると思います。
上下にパラフィンワックスを二枚分介在させます。
これにより、描記針を植立した後にこのパラフィンを取り除くと、印象材が舌側と頬側を行き来し、かかる圧力を均等にすることができます。
そして、上顎の個人トレーの正中よりわずかに右寄りに、フェイスボウの六角棒を入れるためのネジを埋め込み、個人トレーを完成させます。
その後、あらかじめ下顎のトレーの三か所のワックスを除去し、描記針を植立しておきます。
上顎個人トレーの描記針が当たるところに少量のパラフィンワックスを流し、その上にクレヨンをぬった後、ゴシックアーチを印記します。
稲葉式は歯列上の3点法にて描記を行います。
従来の1点法ですと、描記芯と描記盤が口腔内中央に位置するため、舌を後退させなければゴシックアーチを描記することが出来ず、自ずと下顎後退位にて、描記されます。
舌後退位により、最大2mm程度下顎位は後退すると言われています。
シュライヒ先生はゴシックアーチのアペックス上ではなく、描記された前方運動上のアペックスから2mm前方に中心位を定めていました。
舌後退位も必ずしもまっすぐ後方に下がっているわけではなく、右より左よりなどに下げる人もいます。
それにより、左右どちらかに偏移した偏心位になる可能性がとても大きいです。
稲葉先生が歯列上でゴシックアーチを描くのは、アペックスを舌に阻害されることなく、再現することが可能です。
中央のピンはクリステンセン現象を考慮にいれ、スプリング式のピンとなっています。
アペックスにディンプルをつくり、中心位で最終印象ができるように、上下顎同時印象の準備を行います。
いよいよ上下顎同時印象です!
実は、上下顎同時印象は、ポイントを意識すればそんなに難しい作業ではありません。
むしろ上下を別々に採り、後から合わせる方が難しいのではと感じます。
印象中に行う、大切なポイントについても岩田先生から解説がありました。
・舌を前方に出していただくこと。→サブリンガルルームや、舌小帯の形態を出すことができます。
・口を閉じて咬合していただくこと。→咬筋の緊張が記録されます。
・口を閉じながら「イー」「ウー」と発音していただくこと。→頬筋・唇、頬小帯、口輪筋・モダイオラスの形を出すことができます。
・嚥下をしていただくこと。→舌小帯・舌下隙・顎舌骨筋(線)の形が記録されます。
・唇形態修正をする。→人工歯排列の基準となります。
モダイオラス部にガンタイプの印象材を、2プッシュ。
これもポイントだと思います。
この部位に印象材が行き渡らない事がありますので、ぜひ意識して2プッシュです!
咬合器の正中、体の中心軸のバランスの良いところに再現できました。
翼突口蓋縫線がつながっているのかを確認するだけでも、顎位の確認になります。
人工歯排列においては、上顎前歯部では、左側中切歯から始め切歯乳頭から7mm前方に切縁がくる位置に排列すると同時に、石膏コアを用いて患者さんに審美的によい位置に排列します。
技工操作は、IPSG技工インストラクター小平雅彦先生にバトンタッチです。
熟練した技術と、幅広い知識には目を見張るものがあります。
岩田先生と小平先生の連携による総義歯です。
技工士、中沢優太先生のきめ細やかなサポートにも感謝です。
このように口腔周囲筋・口唇・舌のコアに囲まれたデンチャースペースに、正確に排列され歯肉形成されています。
したがって、義歯は安定するだけでなく、空気の侵入が少ないので十分な吸着が得られるのです。
排列や咬合様式、明日行われる重合作業においては、Weber dental laborの石川さんと小泉さんに歯科技工士からの視点でレポートをお願いしてあるので、楽しみにしたいと思います。
患者様への試適は、完璧でした。
上顎はポストダムをまだつけていませんが、大きな安定感を発揮していました。
下顎においても、舌の運動を妨げず口を大きく開いても持ち上がる事なく、素敵な笑顔を見せてくださいました。
明日はいよいよ3日目!
セットに向けて細心の注意を払って一次埋没~三次埋没終了後、流ロウ、重合から研磨まで行います。
Weber dental labor にて、先生方に全てご覧いただく予定です。
技工士による技工作業がどれだけ大変かをご覧いただき、ぜひ患者様に手間暇をかけ、大切に製作していることを説明していただきたいと思います。