Seminar reportセミナーレポート
’17 12/17(日) IPSG Scientific Meeting2017「STRATEGY」~ 学術大会 開催されました①
- IPSG学術大会
岡本寛之先生
『Interdisciplinary Dentistry -補綴歯科医は何を求められているか-』
岡本寛之先生は、昨年から開催されたIPSG包括歯科医療研究会の第1期咬合認定医を優秀な成績でご卒業された先生です。
先生は、教育・医療・研究をテーマとする東京医科歯科大学大学で補綴専門、アレルギー専門で研究や臨床をされております。
今回は1歯単位の治療からInterdisciplinaryな治療をというテーマでお話しいただきました。
Roblee.RD. が1994年に初めて著書でInterdisciplinaryを提唱されたそうですが、IPSG包括歯科医療もちょうど同じ時期にInterdisciplinaryをテーマに発足しております。
どちらが先かではなく、このような概念を先立って研究会とされた稲葉繁先生の歯科治療に対する想いが伝わってきます。
岡本先生はInterdisciplinaryには4つの段階があるとご説明いただきました。
1.Comprehensive Exam 検査と診断
2.Treatment Plan 計画
3.Treatment Final 治療
4.Meintenance メインテナンス
このInterdisciplinaryに対し、自分が描いたビジョンをどのように実行するのか。
それは、『共感によってチームを動かす、そのために成功へのビジョンを抜群な解像度で指し示す』という言葉で表現されておりました。
咬合認定医で学んだ審美の分析から咬合診断、治療計画の立案をし、診断用ワックスアップ行いながら、歯内専門医、歯周病専門医、補綴歯科医師で連携をとり、酸蝕症を主訴とされた女性の患者様に対してInterdisciplinaryな治療を施された素晴らしいご講演をしていただきました。
咬合認定医で学ばれた診査診断をフルに活用され、ご自身の診療に生かされている。
描いたビジョンを実現される岡本先生の講演、私を含め多くの先生が自分もビジョンを描いて実現していけるようにしていこうと思われたのではないのでしょうか。
素晴らしい症例発表をしていただき有難うございました。
武義弘先生
『Ⅱ級前歯部開咬患者への咬合治療』
武義弘先生はご自身のスライドでも“咬合オタク”とおっしゃるほど、咬合理論にとても精通されている先生です。
今回はⅡ級前歯開咬患者へ矯正的アプローチを行い、咬合治療を行った症例についてご講演いただきました。
まず、このような矯正治療を行う前に、なぜⅡ級前歯開咬になったのかを知ることが重要です。
つまり本来、生まれてから人の顎の成長はどのようにして起こるのか、どういった経過を経てⅡ級開咬となってしまうのかというような基本プロセスの知識が大切ですとお話しされておりました。
そのような知識の集積により、開咬の状態にある患者様の状態や条件のもと、どのような治療が最善かという“戦略”を立てることができるようになるのではないでしょうか。
Ⅱ級開咬症例をオーストリアンナソロジーの考えでマルチループを用いた矯正治療を行い、側方運動時の臼歯ディスクルージョンを目的とした犬歯のラミネートベニアをして咬合の安定を図るという素晴らしい発表をされておりました。
ただ単に矯正治療を審美的な問題を解決する治療とするではなく、顎関節を含めた咬合の管理のために矯正治療をなされておりました。
最後に武先生のご講演の最後のスライドに「顎発育が望めない成長発育終了した成人に対して咬合平面を是正し、顎関節を守ることが大切」という記載がございました。
私たち歯科医師が行うどのような治療においても“顎関節を守るような治療をする”ということが重要であると、私を含め多くの先生方が改めて感じることができる講演だったのではないでしょうか。
武先生の咬合オタクぶりがよくわかる素晴らしい症例を発表していただき有難うございました。
金田隆教授
『顎関節症疾患の画像診断』
今年の学術大会では日本大学松戸歯学部放射線学講座教授でいらっしゃる金田隆先生に『顎関節疾患の画像診断』をテーマにご講演していただきました。
金田教授が大会長をされている“先進歯科画像研究会”の第1回学術講演が今年行われました。
私もその学術講演に参加させいただきましたが、CT・MRIのような先進画像診断は今後の歯科医療では必須になりつつあります。
このような画像診断器械が精密になればなるほど、より詳細な診査診断が歯科医師に求められてくるのではないでしょうか。
今回は、限られた時間ですので顎関節という部分に焦点を当て、より正確な顎関節の画像診断についてご講演いただきました。
“顎関節を守る歯科治療をする”をテーマにしている当研究会にとって、この講演はまさしく『The STRATEGY』で、診断と治療計画の立案には必要不可欠な知識であると感じました。
今回のご講演では3つをテーマにお話しいただきました。
1.顎関節の効果的な画像診断法
2.鑑別に必要なポイント
3.特徴的な画像所見
どれも素晴らしい内容でした。
その中には顎関節症を扱っている方でもあまり知らないかもしれない、していただいた方が良い知識が数多くありました。
その1つに、開口障害を伴った症例で、3%は顎関節症ではない場合があるということです。
・下顎骨骨髄炎
・上咽頭癌
・前立腺癌などからの転移
・リュウマチ
・滑膜の肉芽の増殖
・下顎頭に石灰化物 滑膜生軟骨症
など
このような状態ですと、いくらマニュピレーションを行ったとしても開口障害は改善しません。
つまり、そのような可能性を画像診断から読み取る知識と技術が必要です。
そして、必要があれば医科との連携が重要になってきます。
最新技術の恩恵で様々な疾患を発見できるようになりました。
このような時代になると、CTやMRIなどの最先端画像診断機器を使いこなすだけの知識や技能が私たち医療人には求められてきます。
金田教授がお話しいただいた今回の内容は、歯科界の未来を明るく照らしてくれるような貴重なご講演となったのではないかと思います。
1時間という短い時間ではありましたが、とても内容の濃い1時間となりました。
素晴らしいご講演を有難うございました。
今後、金田教授に来年8月頃「顎関節疾患の画像診断」をテーマとした講義を1日かけてお願いすることになっております。詳細は追ってホームページにて掲載させていただきますので奮ってご参加ください。
2017年12月17日 レポート/佐藤孝仁先生
▼レポート②はこちら
https://ipsg.ne.jp/20171217gakujutu-report2/