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Q:下顎両側遊離端のパーシャルデンチャー、テレスコープ症例の辺縁の長さや厚みの目安について教えて下さい。

Q.下顎両側遊離端のパーシャルデンチャー、テレスコープ症例の辺縁の長さや厚みの目安について、どの研修会でも今まで明確に教えて頂いた事がありません。
稲葉先生であればお答えいただけるかと思い、思い切ってご質問させていただきました。
A.下顎両側遊離端のパーシャルデンチャーの辺縁の形態についてのご質問ですが、歯を喪失する順序の中で最も頻度の多い欠損形態が臼歯が欠損する症例です。

両側遊離端では一般に大臼歯の欠損が多いと思われます。
この様な症例に対しキャストパーシャルでは粘膜面の沈みこみは避けることは出来ません。

例えば大臼歯の2本が欠損した場合には、M.Hofmannによれば0.3mm程度の沈み込みがあると報告されています。
そこで、粘膜面の沈み込みに対する対策を行う必要があります。

もしキャストクラスプを補綴側に掛けたならば、粘膜面の沈み込みに対し歯を遠心に傾斜させてしまいます。

そこで考えられた形態はRPIクラスプです。即ち近心レスト、プロキシマルプレート、Iバーで成り立っています。
義歯の遠心の沈み込みがあった場合にクラスプによって歯を傾斜させることを防止しています。

テレスコープでは2本の大臼歯に対し小臼歯2本(生活歯)の支台歯を利用します。
(この際、コーヌスクローネではなくリーゲルテレスコープが適応です。)

この場合の粘膜面の沈み込みは、そのまま支台歯を傾斜させる力となりますので、出来る限り義歯の沈み込みを抑えることが重要です。

そこで義歯床の長さを可能な限り延長する必要があります。

IPSG20周年講演会で、Prof.Dr.Weberもお伝えしていた通り、義歯床は長ければ長いほど沈み込みは少なくなるため、必ず臼後三角(レトロモラールパッド)を被わなければなりません。

さらに咬合力に対し広い面積の義歯床が必要となります。
そこで臼歯の頬側を広げる必要があります。即ち頬棚を利用します。

ここは印象の時に歯槽堤の形態を正確に採得します。
即ち粘膜の固定部と可動部の形態を正確にとり、歯肉頬移行部まで延ばすことが必要です。

辺縁の形態は丸みを持たせ3mm程度に仕上げます。

舌側もやはりできる限り大きくしますが、この部は顎舌骨筋があり、あまり延長は出来ません。
後縁は顎舌骨筋線の手前で止めます。

ここには舌根部が来ますので嚥下の際、舌の動きを阻害しないようにしなければなりません。
そこで、ここは厚くならないように気をつける必要があります。

形態は舌の形態に合わせるように凹面に仕上げ、厚さは1mm位で良いと思います。

いずれにしても遊離端の義歯床は咬合力を受け止め、左右への揺れを防止しなければならない重要なところです。
感覚ではなく、知識として、ぜひ今回の回答を目安に調整をしていただきたいと思います。

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