Questions歯科治療に関するQ&A
Q:高齢者の歯科治療で特に注意するべき点など教えてください
私は日本で初めての高齢者歯科を昭和63年に創設しました。その後に国内の大学に高齢者歯科が作られる様になりました。
今では、全国の多くの大学に高齢者歯科があります。
人口の14パーセントに達するとその国は高齢化が始まったと言われ、20パーセントに達すると高齢化の化が取れ、高齢社会になります。
25パーセントに達するとその国は超高齢社会と言われますが現在の日本は、もうすぐ超高齢社会に突入しようとしている超高齢化社会です。
昭和30年代は子供が多く、う蝕が多い時代でしたので小児歯科が殆どの大学に出来ました。いわゆる団塊の世代でした。
その後、50年が経過して団塊の世代が還暦を迎え、その人達が超高齢社会を迎えようとしています。
歯科医学は保存、補綴、矯正、口腔外科等に細分化され、人間を細分化して考えてしまいがちですが、高齢者の場合には一人の人間として総合的に見なければなりません。
高齢者歯科は子供が大人になりそのまま超高齢者になっても、歯科医療は同じかと言うと、そうではありません。
身体的には老化(エイジング)は避けられないものであり、若いときと比較すると条件はまったく変わります。循環器や呼吸器等の基礎疾患を持っている患者さんが殆どであり、その対応も違います。
更に、脳血管障害や心臓病、整形外科的疾患で介護を必要になっている方々がたくさんいます。
また、精神的には比較的は衰えは見られない事が多いのでずが、認知機能に問題があり、アルツハイマー型認知症、加齢による認知症等歯科医療を行うには困難を伴う場合が多く見られます。
最近では、訪問歯科医療も国の政策で行われていますが、その様な知識と技術は教育されていませんでした。
最近では専門学会も出来研究されてきていますが、家庭の枕元診療では施設や器材に問題がありますので、出来れば歯科医院のユニットで診療を行う事が安全ですし、安心出来ます。
先進国では訪問診療は殆ど行われておりません。高齢者施設が充実しており、専門の診療施設で診療しています。
日本も歯科診療は専門の人が専門の診療施設で治療を行い、専門の介護職員の手でケアーしてもらう様になればよいと思います。
この費用はイギリスではNHS(ナショナルヘルスサービス)から払われ、消費税から支払われますが、最近消費税は17パーセントから20パーセントに引き上げられました。
北欧を含めたヨーロッパの国々では殆ど20パーセントを超えていますが、高齢者になっても安心して過ごせるので、日本の様に8パーセントにするだけでもめているのは、政治が信用されていない証拠だと思います。
高齢者は地位、友人、家族、経済、体力の喪失は避ける事は出来ませんので、十分な知識と技術、信頼関係を結んで歯科医療を行って頂きたいと思っています。
高齢者の歯科診療の注意点を述べるにはスペースがありませんので専門書におまかせしますが、また何かの機会にまとめてお話しできる機会があればと思います。