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2024年12月15日(日) IPSG30周年記念講演会、パーティー開催のお知らせ

背景の絵「審美の原点」 作:稲葉 繁
オーストラリアのアボリジニのドットペイントと岩絵の手法を用いて、口腔内のさまざまな状態を表現。現在は、末広町にある稲葉歯科医院に飾られている。

今年、皆さまのご愛顧をもって、IPSG包括歯科医療研究会は設立30周年を迎えることとなりました。

テーマは「THE FUTURE」

今までIPSGを支えてくれた方、会員の先生、参加されたことのある方、お久しぶりの懐かしい方などお集まり頂けましたら嬉しく思います。

稲葉先生の意向により、30周年はテレスコープシステムや総義歯の発表がない、全く新しい講演内容を考えております。

◎日程/2024年12月15日(日)

◎会場/学士会館 東京都千代田区神田錦町3-28
(ドラマ半沢直樹の数々の名シーンが撮影された会場です。)
⇒学士会館へのアクセス

※IPSG30周年記念講演会はご招待制となっております。
参加をご希望の方は、お問い合わせフォームに『IPSG30周年記念講演会について』とご記入の上、お申し込みください。

今回のIPSG30周年記念講演会では、哺乳期から成長発育期、高齢者の咀嚼嚥下までを通じて、先生方にご講演をいただく予定になっております。

現在、肺炎の中でも誤嚥性肺炎は、高齢者に多い死亡原因として知られています。 厚労省の人口動態統計(2019年度)では、年間死者は4万人以上であり、日本人の死亡原因の第6位です。 高齢人口の増加で急速に増加してきており2030年には約13万人に達するという予測もあります(東京都健康安全研究センター)

嚥下障害が起きてしまった方に対して、できるだけ早い段階でリハビリテーションを行うのは、歯科医師の役割でもあります。

稲葉先生は、舌と唇そして嚥下に必要な筋肉を鍛えることができる嚥下器具の発案には、40年もの間、研究を積み重ねてきた歴史があります。

歯科領域において、大学教育では国家試験のための座学が多く臨床はほとんど教わっておらず、在宅訪問治療においても卒後研修として行っているにすぎません。

このような現状で高齢者治療を行っているのが事実です。摂食、咀嚼、嚥下の治療に対しても高齢者は機能が悪いので食べ物は柔らかく流動性の良いものを提供すればよい。その結果、とろみをつけたり舌で潰せる柔らかい物を与え、機能を向上させる対策はほとんど行っていないのではないでしょうか?

The future…歯と歯肉の治療に重きを置くのではなく、顎口腔機能を正常に保つための知識と技術についてディスカッションを重ねて参りたいと思います。

これから30周年開催まで、様々なトピックをお届けしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします(^ ^)

 IPSG包括歯科医療研究会 代表 稲葉繁先生

IPSG包括歯科医療研究会設立30周年に寄せて

稲葉繁

この度、IPSG包括歯科医療研究会はドイツイスニーのホテル「狩猟の館」で誕生してからはや30周年を迎えることと相成りました。
これまで皆様のご支援の下、ライフステージに応じた口腔機能管理をテーマとして包括的な歯科治療においては他の追随を許さない研究会として成長して参りました。

振り返れば、IPSG発足10周年では「予防」をテーマに招待講演者は予防歯科治療で有名な熊谷崇先生にお願いしました。

20周年では「インプラントとテレスコープシステムの融合」をテーマに取り上げ、ドイツ、チュービンゲン大学よりヴェーバー教授にお越し頂きました。

そして、今回30周年では「筋機能療法」をテーマとさせて頂きました。

その大きな理由として、補綴治療より重要なこと、IPSGが掲げる目的の一つ、医療の出発点である「咬合育成」の大切さを伝える為です。
人生のライフステージにおいて、口腔機能は自然に獲得するものであるという考えの元、正しい哺乳行動、摂食・咀嚼・嚥下について、各方面から高名な先生方に講演をお願いいたしました。

これからの歯科医療の未来~TheFuture~は、手を加えない、自然に任せられる歯列を持つ子供達が育ち、2000年に謳われたMIが現実になるように期待と希望を持ちたいと思っております。

また、先天的歯牙欠損症に方々に対して、歯の再生医療の未来についても大きく期待しております。

私の臨床経験は50年を超えました。私が若くして学んだ、P.K.トーマス、C.Eスチュアート、N.ギシェー、ジャンケルソン、クロボールセンなどのアメリカのナソロジスト達、ドイツで学んだケルバー、アイヒナー、シュルテのヨーロッパの各教授の教えに敬意を表すとともに、後進に知って貰いたいという気持ちで現在まで若い歯科医師や歯科技工士、歯科衛生士などを対象に、補綴に限らず様々なテーマを設定し、乳幼児から老人までを包括的に研修を行って参りました。

さらに1年間かけて咬合認定医の教育も行い、歯科医療で最も大切な咬合を学び、認定しています。

幸いなことにまだ手元はしっかりしており、ビーチ先生から学んだパフォーマンス・ロジックやミラーテクニックのおかげで腰の痛みもありません。毎週木曜日は全国から私の臨床を見学し、症例相談会を行なっております。

次なるIPSG40周年に向けて、命の限り歯科医師を続けていくためにデジタルやバーチャル、最先端の技術を取りいれて参りたいと思います。

最後となりますが、今回の30周年記念学術大会にご参加の皆様に感謝を申し上げますとともに、これからの歯科人生に少しでもお役に立てることができれば幸いです。

登壇者情報

教育講演 中原貴先生

『THE FUTURE:再生医療による歯科医療の新機軸』

2000年以降、歯科の抜歯治療で得られる歯からは複数の幹細胞が報告されており、なかでも歯髄由来の幹細胞は、もっとも再生医療研究が進展した幹細胞として知られます。

歯髄幹細胞が有する高い増殖能、そして複数の細胞種に分化できる能力(多分化能)は、いずれも骨髄由来の幹細胞と比較しても遜色なく、再生医療に適した能力を誇示しています。

私たちの研究チームは、再生医療における安全性と有効性を念頭において、歯髄幹細胞を用いた再生医療技術の研究開発に努めています。

そして最近では、ウシ血清を使用しない安全な細胞培養法の確立、さらに高い有効性が期待できる新たな細胞シート技術の開発に成功しました。

一方、歯髄幹細胞を将来の再生医療に活用する医療インフラの構築に向けて、患者自身の細胞を培養・凍結保存する「歯の細胞バンク」にも取り組んでいます。

このたびの教育講演では、本大会テーマ「THE FUTURE」を拓く再生医療による新たな歯科治療を提起し、歯科医療の新機軸を展望する絶好の機会になることを願います。

■所属

日本歯科大学 副学長
生命歯学部発生・再生医科学講座 教授

■略歴

1999年 日本歯科大学歯学部 卒業(第88回卒)
2003年 東京医科歯科大学大学院 博士課程修了 博士(学術)取得
京都大学再生医科学研究所 特別研究生(99年7月~02年6月)
2010年 日本歯科大学生命歯学部発生・再生医科学 教授
2016年 東京慈恵会医科大学大学院 博士課程修了 博士(医学)取得
2017年 日本歯科大学 副学長 併任
2024年 日本歯科大学生命歯学部共同利用研究センター センター長 併任

教育講演 外木守雄先生

『睡眠時無呼吸症に対する診断と対応 ―歯科医療の未来Air way Dentistryを念頭にー

閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive sleep apnea以下OSA)は、睡眠時に気道が狭窄・閉塞して、イビキ、無呼吸が発生し、熟睡できないことから、日常生活に支障をきたす病気です。

このOSAの病因論に、①解剖学的上気道狭小化、②呼吸調節系の不安定化、③上気道代償性低下、④低い覚醒閾値が考えられ、これらの4つの構成要素が複雑に関連しOSAを発症しています。

①の、解剖学的上気道狭小化には、小顎症、鼻閉、鼻内疾患、扁桃肥大、アデノイド、肥満など解剖学的に上気道を狭窄、閉塞する要素があり、②の、呼吸調節系の不安定化、④の、低い覚醒閾値には、加齢、睡眠ホルモン異常など睡眠生理学的異常が想定されます。

③の、上気道代償性低下とは、上気道を構成する軟組織がいわゆる緩んだ状態を呈し、睡眠呼吸の際に緩んだ気道軟組織が気道を狭窄もしくは閉塞してOSAを発症するとされています。

このOSAの診断には、終夜睡眠ポリグラフ検査(Polysomnography:PSG=脳波、眼球運動、心電図、呼吸曲線、いびき音、動脈血酸素飽和度を計測する)を専門の医療機関で行い、その病態を判断しています。

OSAは睡眠障害の一部で、全身的な疾患と密接に関与しているのでその治療には適切な診断のもと適切な医科歯科連携が必要となっています。

OSAの治療には、下顎を前方に移動させる事で気道を拡大する口腔内装置(Oral Appliance:OA)、上下顎骨を前方に移動させると共に舌骨上筋群を牽引させることで気道を拡大するMaxillar-Mundibular+Genio-hyoid Muscle Advancement:MMA+GA、気道周囲の筋に対する筋機能療法Myofunctional therapy:MFTなどが、OSAの改善に一定の効果を示すことが知られ、多くの知見が報告されています。

このMFTの効果は、当初、筋に負荷をかけることで筋束が強化され気道の狭窄を予防すると予想されていましたが、睡眠時には、筋肉は弛緩するのでいくら鍛えても効果がないとの反対意見もありましたが、摂食嚥下機能を改善する訓練により気道周囲軟組織の弛緩を引き締める効果があると考えられています。

睡眠時無呼吸と摂食嚥下機能低下とはその病因論で共通するものがあると予測され、特に③の、上気道代償性低下、いわゆる緩んだ上気道粘膜の改善、肥った気道周囲の軟組織の改善は、今後、睡眠医療にかかわらず患者のQOLの改善に大きく貢献するものと考えられます。

歯列矯正はもとより、義歯、歯冠修復などの歯科治療は、舌の位置を容易に変化させ、これにより気道に何らかの影響を及ぼすことがあります。

将来に渡りAir way dentistryという概念が今後の歯科医師にとって重要になると考えます。

最後に睡眠歯科学は、本研修会のテーマでもある歯科医療の『THE FUTURE』であり、患者さんの健康増進につながる重要な要素であるので多くの皆様にとって有益な講演となる事を期待します。

■所属

亀田総合病院 顎変形症治療センター睡眠外科 センター長
日本大学歯学部附属歯科病院 特命教授
神奈川歯科大学 特任教授
鶴見大学歯学部 臨床教授 

■略歴

1983年 東京歯科大学 卒業 歯学博士
2002年 米国Stanford大学医学部機能再建外科学教室、睡眠外科、客員研究員
2012年 日本大学歯学部口腔外科学第1講座 主任教授
2023年 亀田総合病院 顎変形症治療センター睡眠外科 センター長日本大学歯学部附属歯科病院 特命教授神奈川歯科大学 特任教授、鶴見大学歯学部 臨床教授(2024)

発表 今井美行先生

『新生児の母乳保育について』

哺乳類ヒトは生後8か月から10か月でようやく歩き出します。多くの哺乳類は出生後すぐか、3週までには歩行できます。

ヒトの新生児は通常の分娩でも『生理的早産』で出産され、出生直後は首も座らず、頭部も大泉門のあたりは心臓の鼓動がわかるほどの軟骨状態です。

未熟児の状態で生まれたヒト新生児は実母の血液を原料とした母乳を摂り身体も心も成熟してゆくことが大切です。(日本での母乳率は50%以下、スウェーデン70%)口腔では母親の乳首を吸啜することで本来の口腔機能が育ちます。

口腔周囲の筋肉や舌が発育し、それらの力を受けて顎骨も成長して行きます。

新生児の本来の自然な吸啜は、健康な身体、聡明な能力、整った顔貌を備えるための“予約券”を授かることなのです。

歯科医師としての母乳育児の大切さがお伝えできれば幸いです。

■所属

今井歯科クリニック 院長
日本フィンランドむし歯予防研究会
日本顎咬合学会
IPSG包括歯科医療研究会 会員

■略歴

1984年 日本歯科大学歯学部卒業
1984年 同大学補綴学第二講座入局
1987年 秩父市にて今井歯科クリニックを開業
2004年 臨床研修医指導歯科医師

発表 大石暢彦先生

『若年者の歯列不正に対する筋機能療法』

我々歯科医師は健康の管理者として、口腔硬組織のみならず患者さんの筋骨格系を観察する習慣を身につけ、長期に安定した咬合の確率を目指すべきです。

特に「お口ポカン」とした口唇閉鎖不全の小児患者に対し、正しい舌の位置、嚥下の獲得による中顔面の良好な発達、そして鼻呼吸による健康で強い体をつくる事は医療従事者としてこの上ない喜びです。

卒後、稲葉教授に師事し日々、咬合を基軸とした臨床を行い、高齢者の義歯治療および顎関節症治療を行う中でオーストラリアのMRC開発者である、Dr Cris Farrellとの衝撃の出会いに導かれ子供達のbetter faceに囲まれ充実した、臨床を行っております。

500症例超の実体験から口腔機能発達不全への取り組みをご紹介いたします。

■所属

大石歯科クリニック(神奈川:横浜) 院長

■略歴

1992年 明海大学歯学部卒業
1993年 日本歯科大学 高齢者歯科
1994年 IPSG設立メンバー 事務局長(Deutscland:Allgau)
1999年 日本歯科大学 補綴学第三講座
2003年 日本顎咬合学会 優秀発表賞
2005年 大石歯科クリニック開院 (横浜・東戸塚)
2010年 Myobrace®︎ 治療開始
2019年 Myobrace Member加盟

発表 飯塚能成先生

『器具を用いた口腔トレーニングによる呼吸と嚥下機能へのアプローチ』

器具を用いた口腔トレーニングに従事して17年が経過したが、呼吸と嚥下は生命維持に不可欠な一体化した機能であり、呼吸時には嚥下が不可能であり、嚥下時には呼吸が一時的に止まるという精密なメカニズムを有している。

人間が二足歩行をするようになったことで、飲み込みと呼吸の経路が咽頭で交差し、誤嚥が発生しやすい構造となった。また、嚥下反射は0.4秒以内に脳や神経、筋肉が精密に連携することによって起こるため、筋力低下やわずかなタイミングのずれが誤嚥を引き起こす可能性がある。

このような複雑な呼吸と嚥下運動を効果的にトレーニングするためには、哺乳行動を再現できるような器具を用いる方法が有効であると考える。これまで、稲葉繁先生が考案した器具を用いて、高齢者や要介護高齢者の嚥下障害に対するリハビリやオーラルフレイル予防に取り組んできたが、その効果は顕著であった。このトレーニング方法は、単に筋力を強化するだけでなく、不随意運動である嚥下反射の精度を向上させ、誤嚥リスクの軽減にも貢献するものである。

本発表では、器具を用いた口腔トレーニングを随意的に繰り返すことで、呼吸と嚥下機能にどのような影響が生じたかを詳しく考察する。これまでの実践に基づいて、トレーニング前後の数値的変化、形態的変化、症状の改善状況を中心に検討し、呼吸と嚥下のメカニズムとの関連性を掘り下げて分析する。また、哺乳行動を再現する器具の使用が、高齢者の生活の質向上にどのように寄与するかを明らかにする予定である。

■所属

IPSG包括歯科医療研究会 会長
飯塚歯科医院 院長

■略歴

日本歯科大学卒業
1986年 飯塚歯科医院 開院
       日本歯科大学 高齢者歯科聴講生在籍 (5年)
2011年9月 IPSG包括歯科医療研究会 会長 就任
2021年9月 日本語下機能訓練協会 代表理事就任

特別講演 官野一彦氏

22歳の時にサーフィン中の事故により頸椎を損傷。一命は取り留めたものの車いす生活を余儀なくされた官野一彦さん。

■主な競技歴

2012年 ロンドンパラリンピック 4位 2014年 世界選手権 4位 2015年 アジアアセアニアゾーン選手権 優勝 Best Player賞受賞 2016年 リオデジャネイロパラリンピック 銅メダル 2017年 アジアオセアニアゾーン選手権 2位 2018年 ジャパンパラウィルチェアラグビー競技大会 優勝世界選手権 金メダル

以前、官野様の講演を聞かせていただく機会があり、絶対にお呼びしたいと思って、あたためていた方です!

この度、IPSG30周年記念講演会にご登壇していただく事が叶いました

全ての方に勇気と希望、未来を与えてくださる内容になると思います。

野球の強豪・木更津総合高校にスポーツ推薦で入学し、1年生からレギュラーで活躍する。卒業後はサーフィンを始めるが、2004年22歳の時にサーフィン中の事故により頸椎を損傷。

一命は取り留めたものの車いす生活を余儀なくされた。2006年から車いすラグビーを始める。

スピーディーな展開と、激しいタックルに魅了され競技の虜となった。競技を始めて1年という早さで日本代表に選出され、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと2大会連続でパラリンピックへ出場。

リオでは日本車いすラグビー史上初の銅メダルを獲得して話題となった。2020年、車いすラグビーからの引退を宣言。

現在はパラサイクリング競技でロサンゼルス大会に向けて活動中。

「挫折や困難を乗り越えるための最強のマインドセット」

・できるかできないかじゃない→どうやったらできるか。やれない理由探しはやめよう。
・未来は「今」の積み重ね→今やらなければ明日もやれない
・チャンスは与えられるものではない→行動を起こす→運を掴む
・人と会うことに尽力すること→学び・縁・気づき

私たちにも、どうしようもなく苦しいことや困難に直面すること、ありますよね。

官野さんから最強のマインドセットの方法をぜひ体得しましょう!

登壇者情報は随時更新していきますのでお楽しみに!どうぞよろしくお願いいたします(^ ^) 

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