Seminar report

’14 6/29(日)『総義歯の基礎と臨床』開催されました【後半】

’14 6/29(日)『総義歯の基礎と臨床』開催されました【後半】

IPSG事務局、稲葉由里子です。
『総義歯の基礎と臨床』【前半】に続いて【後半】のレポートをさせていただきます。

稲葉先生が、『上下顎同時印象法』を開発した経緯について、まず、お伝えいたします。
1978年ドイツ、チュービンゲン大学の客員教授として留学をしていた際、IVOCLAR社主催の総義歯のセミナーを受講しました。

その時の補綴研修部長が、Dr.Hans Shleichです。
大変な衝撃を受けたと言います。

日本の教育の総義歯とは、全く違う方法で行われていました。
その時IVOCLARでみた方法は、スタディーモデルを上下顎同時印象でアルギン印象で行っていました。

稲葉先生は、それ以来、これをどうにか、上下同時に最終印象で、そしてシリコン印象で行いたいと、ずっと考えていました。

そして、20年前稲葉先生が代表を務めるIPSG発足を機会に、Dr.Hans Shleichを招き、IPSG発足記念講演を開催しました。

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こちらがその当時の写真です!
IPSG発足して、20年なので、ちょうど20年前の写真ということになります。
(左上のモノクロの写真には、わたしも写っています・・・

日本歯科大学の講堂で開催された、とても懐かしい写真です。
それから間もなく、稲葉先生は、ガンタイプのシリコン印象材が開発されたのを機に、最終印象を上下顎同時印象で取る方法を開発し、発表しました。

日本の総義歯は残念ながら遅れています。
現在の排列もギージーの方法のままです。

上下顎同時印象法は、特殊なものなので、大学の教育に取り入れられることはありません。
エビデンスがあっても、国家試験には結びつかないので、大学ではなかなか取り入れられるのが難しいテクニックなのだと思います。

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〜シュライヒ先生について、Dr.Hans Schleich〜
・1926年ドイツミュンヘンで生まれ、父親はワイン作りのマイスター
・ミュンヘンで歯科技工士の資格を取得し、その後矯正学を勉強ドクターの資格をとる
・リヒテンシュタインのイボクラー社の補綴研修部長となり、イボクラーデンチャーシステムを完成させる
・その後イボクラーデンチャーシステムを広めるために世界各地で講演活動をする
・ブラジル、サンパウロ大学から名誉博士の称号を受ける
・1994年イボクラー社を退職。

〜シュライヒ先生の功績〜
・ヨーロッパの多くのプロフェッサーの業績を義歯の製作というテーマでシステム化し、イボクラーデンチャーシステムを作り上げた。
・即ち、印象はミュンスター大学マルクスコルス教授の上下同時印象用トレーであるイボトレー
・咬合器はデュッセルドルフ大学のベトガー教授のナソマート咬合器のシステム
・ゴシックアーチ描記はポーランドワルシャワ大学のクラインロック教授の描記法、ナソメーター
・人工歯はチュービンゲン大学のシュトラック教授のオルソシット等を取り入れ、さらに印象材、カップバイブレーター、トレーレジン、イボカップシステムを開発し、総義歯製作の体系を創り上げた人

Dr.Hans Shleichが、今のBPSシステムのインストラクターの大元だったことは、あまり知られていません。

残念ながら、今のBPSシステムとシュトラックデンチャーは違うものとなってしまいました。
シュライヒ先生、稲葉先生、そして総義歯の巨匠と呼ばれる先生方の技工インストラクターを務めてきた、故岡部宏昭先生が、BPSとシュトラックデンチャーの明らかな違いについて述べています。

BPSとシュトラックデンチャーの違い

シュライヒ先生は、引退するとき、すべての資料、スライドを稲葉先生に託しました。
世界中に広めてほしいと。シュトラックデンチャーを絶やさないでほしいと。

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今回の総義歯は、Ivoclarのストラトス200咬合器を用いて、お伝えさせていただきました。

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当時のIvoclar社のリンダーさんとグルネンフィルダーさんに、上下同時印象の説明をしているところです。

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IPSGセミナールームでは、大画面のプロジェクターのスクリーンでご覧頂けるので、本当に細かいところまで、詳細に見る事ができます。

こちらの動画は、故岡部宏昭先生の排列の模様。
これだけ、排列をしっかりと記録してあるDVDは他にはないと思います。

2000個以上の総義歯を製作してきた、岡部先生が、ポストダムの付与の仕方、シュトラックデンチャーの排列方法などを、トークと一緒にご覧頂きました。

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こちらが、IPSGで販売しているDVDです。
私の母である、稲葉則子が撮影、製作をしました。

母は、日大芸術学部、映画学科を卒業したので、映画を撮影したり編集ができます。
撮影も稲葉先生の目線よりも近くだったので(笑)とても勉強になると思います。

また、この作品は、岡部先生の遺作ともなりました。
岡部宏昭先生は、稲葉先生、シュライヒ先生などのナンバー2として総義歯の技工分野を担当。

特に人工歯の排列には天才的な感性があり、その知識・技術は他を寄せ付けないものがあります。
大変素晴らしい、DVDだと思うので、もしよろしければお買い求めください!

『ライブで見せる究極の総義歯Ⅱ』

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ポストダムの位置は、後縁をアーラインに沿って模型に彫り込みます。
目安としてはハーミュラーノッチを左右に結び、口蓋小窩を通過する線が後縁です。

そして、ポストダムの付与について、 上顎の場合には周縁の封鎖は、頬筋と口唇により封鎖されますが、口蓋の部分は封鎖が難しく空気が侵入しやすくなります。

そこで、その対策としてポストダムを形成します。
ポストダムの位置は、後縁をアーラインに沿って模型に彫り込みます。

目安としてはハーミュラーノッチを左右に結び、口蓋小窩を通過する線が後縁です。
その位置に2ミリ、ハーミュラーノッチと口蓋小窩の間に幅4ミリの波紋で、深さはハーミュラーノッチと口蓋小窩の部分は深さ1ミリ、中間に2ミリの深さに彫り込みます。

と言われても、なかなかわからないと思います。
総義歯ライブ実習コースでは実際見ていただくことができますが、DVDでも、非常に詳しく解説されているので、ドクターにとっても、テクニシャンにとってもとても勉強になると思います!

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シュライヒ先生のスライドより。

顎底の形により、人工歯の選択方法の参考になるということですが、稲葉先生は、ほとんどが、スクエアータイプを選んでいて、一番すっきりしていてキレイに見えると言っていました。

Triangularタイプはあまり選びません。
点接触よりも線接触のほうがキレイに見えます。

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CPCライン

Canine(犬歯) Papilla(切歯乳頭) Canine(犬歯)を結ぶ線は総義歯の排列の基準になります。

人工歯の排列基準、とても参考になるので、ぜひ覚えて頂きたいと思います。

切歯乳頭の中点から7ミリ外側(唇側)に中切歯唇面。
第一横口蓋数壁の末端からCPCラインに向かい9ミリ外側に犬歯の最大豊隆部。
CPCライン上に犬歯尖頭。
第一横口蓋数壁末端から2ミリ外側に犬歯の舌側の歯頸部。

こちらに関しても、ぜひ、ライブ実習で実際にご覧になるか、DVDでご覧頂きたいと思います!

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同じく、パウンドライン

下顎の犬歯の近心隅角とレトロモラーパッドの舌側面を結んだライン。
そして、大切なのは顎舌骨筋の付着の仕方を頭の中に入れておく事です。
この部分は、シュトラックデンチャーでは使いません。
なぜなら、舌の動きを阻害してしまうから・・・ですね!

ほかにもこの何倍もの貴重な資料がありました。
私は何度もこのセミナーを聞いてきましたが、新しい発見が沢山あり、患者様に早速伝えたいと思います。

ということで。
来月はいよいよ、実際に患者様をお迎えして3日間で問診から印象、技工作業から装着まで、すべてライブでご覧頂くコースが開催されます。

詳細はこちらになりますので、ぜひいらっしゃってください!
総義歯ライブ実習コース開催

ご参加いただいた先生方の感想も少しお伝えしたいと思います。

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▼総義歯の歴史がとても興味深かったです。人工歯の排列ひとつとってみても、私達Drがしっかり勉強して技工士を誘導できるようにしないといけないと思いました。やはり、稲葉先生の総義歯は究極だと思いました。

▼天然歯歯列の稙立状態と同じ場所に人工歯を排列することの重要性がよくわかり、大変勉強になりました。また人工歯の排列がビデオでも詳しく見れてよかったです。

▼昨年のこのセミナーから参加させて頂きました。1年まわってようやく少しわかってきた気がしますが、完全にマスターするつもりで今後も参加させて頂きます。

▼今までの総義歯の概念を全く変えるものでした。大変勉強になりました。今後も勉強させて頂きたいと思います。有難うございました。

▼初めてIPSGの講演に参加させて頂いてとても勉強になり、技工物製作の参考になりました。今後も機会がありましたら参加したいと思います。

▼本日も勉強になりました。日常臨床では「慣れ」からくる「横着」が少なくとも出ていることに反省です。原点に再びもどり日々精進したいと思います。

▼総義歯の基礎と臨床は今回で3回目になると思います。冒頭、飯塚会長がお話されていたように何度出席しても勉強になりますし、前回気付かなかった点に気づいたり、再確認することもありました。

▼いつも思うのは、道具をそろえても技工士さんとのマッチングがうまくいかないことが多い。勿論こちらの技術の未熟さゆえの問題ですが、このシステムの道具をそろえてもう一度トライしてみようと思います。
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ご参加いただいた先生方、本当にありがとうございました!

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