Seminar report

’22 6/25,26(土・日)『第7期 咬合認定医コース 第2回』開催されました

’22 6/25,26(土・日)『第7期 咬合認定医コース 第2回』開催されました

  • 咬合認定医コース

一日目のセミナーの冒頭は、IPSG包括医療研究会の講師の方々と補助スタッフが、それぞれ挨拶を行った。

今回の講師は、IPSG包括医療研究会の代表稲葉繁先生、副会長岩田光司先生・嶋倉剛史先生、特別講師小西浩介先生・佐藤孝仁先生であり、それぞれ特色のある研修が行われた。

●包括歯科医療の実践
稲葉繁先生「健康という言葉は、健やか即ち強い体と康らかな心という意味から作られている。

つまり、歯科医師も一部分を修復するようなパーツ屋さんではなく、体全体の状態を考慮した治療が必要になってくる。

そして、そこからまた元の社会生活に戻すというリハビリテーションを提案していく。これが本当の治療。」

講習の始めに、稲葉繁先生はIPSG包括医療研究会の会長飯塚能成先生のリハビリテーション活動が、厚生労働省の広報誌「厚生労働6月号」に掲載された事を述べた。

飯塚能成先生は、筋機能療法の講師でもあり、嚥下リハビリテーション「エントレ」を使い健康状態や年代別に合わせた治療を行っている。

●咬合診断の重要性
稲葉繁先生「咬合診断がこれからの歯科医療の主流。咬合診断によって患者へのプレゼンテーションの質をあげる。」

稲葉繁先生は顎関節に咬合器の顆路部が装着された頭骸骨を使い、咬合器がどのような仕組みと理由で作られた器械かを説明した。

次に将棋の駒を手に取って顎の形は五角形のホームベース顔が顎骨を含めた顔面の成長とバランスが良いと述べた。

また、それらの道具を使う事により患者へのプレゼンテーション方法が上がる事も説き、咬合診断は患者への信頼関係を構築する上で重要だとした。

顎関節や咬合状態は、一般的な歯科医療の予防策では解決出来ない先天性の状態があるため、その事を患者へ理解してもらい、歯科医師が正しく指導を行っていく必要がある。

咬合治療の大事なポイントとして、歯科医師の役割とは、身体全体から顎口腔系まで含めた患者の状態を診察し、また摂食、咀嚼、嚥下に伴う運動状態を正しく理解し診断する必要があるとの説明があった。
 
また、これらの論理体系は、稲葉繁先生がPosselt、P.K.Thomas、C.E.Stuart、Jankelson、E.Kerberなどの歯科医療界の基礎となる著名な先生方に直接会って学んできた経験によって構築されたという経験談も講義の随所に述べられた。

●「なぜKavo protarの咬合器なのか」
小西浩介先生「咬合診断は、ちゃんと原因を見つけてから治療へ運ぶ作業です。」

IPSG認定講師の小西浩介先生は、始めに銀歯やブリッジなどの補綴物が多くあると全体の咬合が正常で無くなる事を臨床内容のスライドを交えながら説明した。

そして、保険適用外の高額な治療ほど、その結果が患者の意向と合わなかった場合、裁判で争う事も発生するという危惧を述べ、それを防ぐ為には症状の原因と治療過程を丁寧に説明する事が重要と説明した。

その後、数ある咬合器の中からなぜKavo protarが重要かを述べ、顎関節の構造と咬合器の関係やその取り扱いについて説明がなされた。

●実技研修1
IPSG包括医療研究会の副会長の岩田光司先生は、講師として身体全体のバランス評価や顎関節症の診察方法、印象採得、Kavo protar咬合器のハンドリングなどの指導を行った。

姿勢や顔貌の評価は、両肩や左右の指先のバランス、上下唇の歪みなど確認しながら進め、これらの観察はアラインメントという左右対称性を評価する為の診察過程を経て診断をしていく。

●咬合治療の臨床

開口量の計測や開閉運動時の変位を記録した後、筋触診で胸鎖乳突筋、僧帽筋、咬筋、側頭筋などの状態を確認し、患者の応答も踏まえた上で総合した顎口腔系の記録をする。

ドップラー聴診器を用いて、顎関節の異音を調べる。聴診器の先端部を浅側頭動脈に当て、脈拍音を確認した後、関節円盤へ移動させ、患者に開閉運動をしてもらい異音の有無を確認する。

次に、アルジネート印象材を規定の混水比で自動練和器を用いて練和し、金属トレーにて印象採得を行った。下顎隆起がある場合、トレーが衝突している際は損傷する為、無理に押し込んではならない。

佐藤孝仁先生「この機会を無駄にせず、我々が蒔いた学びや経験の種を、現場へ戻った際には皆さんご自身で決して枯らす事無く育てていって下さい。」

IPSG認定講師の佐藤孝仁先生は、始めに今回のセミナー参加者らに研修会へのpassionがどれほどあるのか質疑応答した上で確認し、患者により良い歯科医療を提供するにはどのような姿勢でこの研修会を受けて欲しいかを念入りに説いた。

また、自身が運営する矯正歯科医療での治療過程やその治療で扱う梃子などの知識を講義で解説した。

●下顎位

稲葉繁先生は下顎位とは何かを説明する際、著・沖野節三 監修・小山正宏/ほか「咬合の生理とリハビリテーション」を紹介しながらその構造を解説した。

●実技研修2

二日目。実技研修は副会長の岩田光司先生と嶋倉剛史先生が指導し、フェイスボウトランスファーの採得、ウォッシュを用いた中心位での咬合採得、側方チェックバイトの採得などを行った。

●歴史

最後の講義にて、稲葉繁先生は新人ホモサピエンスが猿人アウストラロピテクス、旧人ネヤンデールタール人などの進化を経てどのような身体の変化を続けてきたのか、主に骨格の資料を提示しながら解説した。

また、日本は江戸時代には木床義歯が使われており、その制作過程では蜜蝋で口腔内印象をとり、ツゲなどの木材を彫刻して床にした後、石や象牙で歯を形成していく内容になっている事を述べた。

現代では材料は変わるが、義歯が口腔内から離脱することなく、咀嚼出来る品質であるという事を述べ、日本の技術の高さを説いた。

レポート:Weber dental labor 

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